強がりウサギの不器用な恋
明未さんの言う、“顔見知りの人” ――――
そんなの、私と明未さんの接点が少ないことを考えれば、おのずとそれが海藤さんを指していることは丸わかりだ。
何故、相手が海藤さんだと思ったのかは、わからないけれど……
私がその質問にどう誤魔化して答えようかと、言葉を冷静に探していると、明未さんが手に持っていたスマホがピカっと光って何かを告げた。
「あ、真吾だ。もう新幹線降りたのかな。」
スマホの音は消していたみたいだが、光ったのは社長からの着信だった。
「ちょっと、外で電話してくるね。
約束どおり、真吾がここに来ないように阻止するから。」
大きなお腹を抱え、明未さんは立ち上がるとゆっくりと部屋を出て行った。
タイミング良く、社長が窮地を救ってくれたようだ。