強がりウサギの不器用な恋

そんなことは全然知らなかった。

……いや、私が明未さんと直接話をしたのはおとといで。
それまで社長とも明未さんや赤ちゃんの話は一切しなかったのだから、私は知らなくて当たり前だ。


帝王切開を……勧められていたなんて。


「今は自然分娩していますが、ダメなら途中で帝王切開に切り替えるそうです。」


それを聞いて、心臓がギューっと締め付けられたように苦しくなった。

明未さんがどんな覚悟でこのお産に挑んだのかと思うと、その想いの重さに敬服する。


「でも、できたら自然に産みたいって明未さんの気持ち、私わかります。頑張りたいんですよ。」


お兄さんの隣に座っていた池上さんが、泣きそうな表情で言う。

すると、お兄さんが太ももの上に置かれていた彼女の小さな手を、上からギュッと握った。


……あぁ、二人は恋人同士だったのか


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