強がりウサギの不器用な恋

「海藤さん! 先に行ったんじゃなかったんですか? みんなは?」

「みんなは先に行った。」

「…は?!」

「俺だけ残った。
操を一人で置いてけぼりとか、俺には出来ないから。」

「私、子供じゃないんですから…」

「うん。わかってるけど、それでも出来ない。」


心配を……してくれた、ということだろう。
子供じゃないんだし、携帯だって持ってるのに。


もしこれが、この男ではなくバイトの男の子たちなら、
ハニかんだ顔して「心配だったんで…」とか口にするんだろうし。

私もそれなら「心配なんていらないのに!」なんて、冗談っぽく言い返したりできただろうに。


この男の纏う空気は違う。

それは、絶対的なオーラとでも言うべきか。


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