強がりウサギの不器用な恋
話の腰を折ってしまったのかと海藤さんを見れば、濡れた黒髪の隙間から見える彼の熱い視線に捕まる。
この話の流れとその視線で、心臓がおかしくなりそうなくらいに早鐘を打った。
「女を、手に入れたと思った。
ベッドで愛し合ったってことは、気持ちが通じ合ったって……俺は勝手にそう思ったよ。恋人同士になれるものだと…。
だけど、日本に帰ってきて会社に出社したら、女は……長年片想いしていた男と朝から嬉しそうに喋ってた。
俺とマレーシアで過ごしてたときより、数倍嬉しそうな顔して笑ってて。
それ見た瞬間、頭を何かで殴られたような衝撃を受けた。
女が好きなのは、その男であって俺じゃないのに、何を勘違いしてるんだ? って。」
あぁ、そう言えば……
マレーシアから帰って、週明けに出社した朝、海藤さんは酷く機嫌が悪かった。
というか、それからずっと様子が変で。
何が原因なんだろうとは思っていたけれど。