強がりウサギの不器用な恋

「一度抱いたからって、心まで手に入れた気になるなんて、よく考えたら相当図々しいと自分でも思った。

だから……待つことにしたんだ。
心の中からその男を徐々に消してって、俺でいっぱいにしてやろうって。
焦らずゆっくり、距離を詰めていこうって。

俺を、丸ごと受け入れてもらえるように。」


視線を感じて、何気なく海藤さんに目をやると、その表情に切なさがありありと滲んでいた。

何か切羽詰ったような……余裕の無い表情。

彼らしくない。



「まだ……口説いてる最中なんだ。」

「………」

「はっきり気持ちすら伝えてないのに、逃げられたら困る。」

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