強がりウサギの不器用な恋
「あーあ。俺、得意先行ってこよーっと。」
社長のわざとらしい声が部屋中に響く。
鞄を持って事務所を出て行く社長を、何も言わずに見送った。
「朝一番から、得意先って……どこへ……」
「嘘に決まってる。どうせどっかのカフェでコーヒーでも飲むつもりだろ。」
出て行きたくなるほど、今は私と顔を合わせたくなかったのか。
それとも、私と彼を二人にして気を利かせたつもりなのか。
………おそらく、後者だ。
「昨日、渡しそびれたもんがあったんだ。」
彼が私の机の端に、小さな箱を置く。