強がりウサギの不器用な恋
奢ってやる、と言って連れてこられたのは街角の古くて小さなカレー屋さんで。
「先輩、何でここなんですか?」
女の子を連れて食事というならば、もう少し雰囲気の良い店でもよくないですか? と少なからず抗議したい。
「ここのカレー、めっちゃくちゃ美味いんだって!」
いいから食ってみろ、と笑顔でスプーンを差し出すこの男。
私が女だということを全く意識していないとしか思えない。失礼な話だ。
「前から言いたかったんですけど、何で私だけ苗字で呼ぶんですか。」
「え……いや……何でかなぁ?」
「はぁ?」
「呼びやすいっていうか、しっくりくる。……うん。」
特に理由なし、か。