ワタシ的、悪戯と代償
先生が長い脚を組み替えた。そして私に視線を一度向けると、またその紙へと戻す。
「離陸する時、飛行機は前へと進むね。すると、この翼へはどんな力が加わるだろう。」
「えっと、……風?空気の力が加わります。」
「そう、飛行機は空気を切るように進むから、空気は翼の上辺と下辺、それぞれに沿って流れる。」
先生は紙に書いた翼に、空気を表す絵を足す。翼の左端から右端へと矢印を引っ張る。
前から流れてきた空気は、ぴったりと翼に沿って後ろへと流れていることがわかる。
「こう矢印を引いてみると、長さが違うことがわかるね。」
「カーブしている分、上辺の方が長くなりますね。」
そう、と一言だけ言って、ボールペンの先で右端を指す。
「だけど空気がここへ達するのば同時なんだ。どういうことかわかるかな?」
「……上の方が、空気の速さが早い……?」
恐る恐る答えを導き出すと、先生は満足したように口の両端を上げた。
先生は笑うときに歯を見せない。笑顔を見せないわけではないが、彼がそれを表す時は必ず口の両端を上げるだけなのだ。