ワタシ的、悪戯と代償
先生はそこで一度話を止め、机の上に置かれたコーヒーへ手を伸ばす。
もう長いこと使っているだろうそのマグカップは、よく見ると少し欠けているのだが彼はそれを気にしない。
そしてその容器に入っている真っ黒なそれは、誰もがブラックコーヒーだと思うだろうが違う。そこには少なくともスティックシュガーが三本は投入されていることを私は知っている。
もう緩くなっていることであろうそれを二口ほど口に運ぶと、先生はまた話を再開した。
「どこまで話したっけ。」
「空気の到達する時間は同じだと。」
「あぁ、そう、そうだ。そこで注目するべきところは、圧力だ。」
この場合は空気圧だね、と付け足す。
「空気の流が早い方、つまり真っ直ぐに働く圧力が強いほど、横へ働く圧力は小さくなる。これは上辺だね。」
「下辺はその逆ですね。真っ直ぐに働く圧力が小さいから横に働く圧力が大きくなる。」
「ほら、もう飛行機は飛んだだろう?」
なるほど。横に働く圧力を見ると、上から翼にかかる圧力より、下から翼にかかる圧力の方が勝っている。
だから飛行機は飛ぶことが出来るのだ。