ワタシ的、悪戯と代償
その問いに、先生は動きを止めた。マグカップに口をつけたまま、暫し考えている様子だった。
私はその姿を見て心配をする。そのマグカップは欠けているのだ。もしその口を切ったりしたら、どうするつもりだろうか。
「……カラオケとか、ボウリングとか。」
「先生も私くらいの時に行かれましたか?」
「僕はそういう類いのものは行ったことがない。」
ということは、先生は私くらいの年頃のころ、少なくとも"普通"では、なかったということだろうか。
「私ここにいる方がカラオケよりもボウリングよりも楽しいわ。」
「君って子は……。」
「先生と過ごす方が何倍も楽しいもの。」
私の言葉を聞き、先生は一度眉間にシワを寄せた。その表情が表すものが、何かを私は知っている。
逆に、この部屋を何と呼ぶのかを私は知らない。
科学実験室に併設されたこの部屋は、本来準備室として利用されるものなのだろうが、ここを見渡す限りそういった用途では使われていない。
ここにはデスクがいくつかあり、その上にはノートパソコンが乗っている。
端に寄せられた棚にはコーヒーメーカーがあるし、壁には小さなテレビまであるのだ。