ワタシ的、悪戯と代償
「待ってては駄目ですか?」
「駄目だね。」
即答だ。だけど、そんなことじゃへこたれない。どうして?、とその綺麗な横顔に問いかけると、先生はこちらを見ずに答える。
「会議はきっと長くなる。そうすると君の家の方が心配するだろう。」
「うちの人は心配なんてしないわ。」
「親の心子知らず、だね。」
明らかに子ども扱いをするその態度に、自分がイライラし始めているのがわかる。
ただここで拗ねたら本当に子どものようだ、と自分に言い聞かせる。
「……じゃあ今日は諦めて帰ります。」
「それがいいね。」
あからさまにホッとした様子でこちらを見る。その態度に少し意地悪をしてみたくなった。
椅子を更に先生の方へ寄せると、やっとこちらを見てくれた。
周りの人たちはあまり共感してくれないけど、先生は美形だと思う。鼻は高くて、彫りも深い。目は一重だけど切れ長で、顎のラインも申し分ない。
ただいつも眼鏡をかけているし、そもそも先生自身が地味なので、それに気付いているのは私くらいだと思う。
「先生。」
「今日はいつになく近いね。」
「ふふ、だってもう帰らなくちゃいけないんでしょう?」
いつもより過ごせる時間が短かった分、先生を補給していかなくてはならないのた。