紫陽花と犬
「条件があるわ」
「……何でしょうか」
少し睨むようなあたしの視線に、男は逸らすことなくしっかりと見つめ返して、次の言葉を待っている。
この男と言葉を交わすのは、多分7日ぶりだ。
と言っても、7日前は「帰って」の一言しか発していないが。
「あたしの質問にはイエスかハイで答えて」
「……はい」
「あたしに質問はしないこと」
「はい」
「それが約束できるなら、置いてあげる」
あたしの言葉に、男の表情にぱっと明るい花が咲く。
「ありがとうございます……!」
鬱陶しい雨の日。
あたしは、犬を拾った。