†ヴァンパイアの恋情†

 その日の放課後。
 さっそく仮装カフェの準備が始まった。

 …といっても、まだ話し合いの段階なんだけれども。

「メニューどうする?」

「クッキーと飲み物でいいじゃん」

「じゃあ、作る人どうすんだよ」

 作れる人を把握しないでカフェにするとは…。
 なんて無計画な。

「…ま、…じま、春島!」

 はっ、とした。声をかけられていたとは。
 しかも…

「何かしら、皇楓太君」

 頬杖をつきながらそちらに目をやる。
 なぜか私の隣の席に座っている。
 学級全体が息をのんだのがわかるほどの静けさがやってきた。

「あー…、こっちは少し相談するだけだから、さっさと決めちゃって」

「あ、あぁ…。じゃあ、メニューは…」

 皇の一言で、またメニューの会議が始まった。
 こいつ…。

「春島さぁ…なんでそんなにつまらなそうなのさ」

「…あなたには関係のないことでしょ」

 面倒なことを聞いてくる…。
 そんなの、去年じっくり味わったからよ。

 あの日…。

「もしかして、去年のこと、まだ…」

 がたんっ。

 大きな音を立てて立ち上がった。

「…関係ないって言ってるでしょ。あなたが踏み込んでいい問題でもないのよ」

 …こんな時でも、表情が動く気配もない。
 クラス全体の視線がこちらを向いている。

「春島…」

 皇の呼び掛けには、耳を貸す気にもなれず、
 そのまま教室を出た。



 ————また、やってしまった








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