†ヴァンパイアの恋情†
勢いで教室を出たけれど、このまま帰ると教師につかまって面倒になりそうね。
いつも通り、図書館で時間をつぶしましょうか。
私は、図書館に入った後、よみかけの本を1冊取り、『特等席』に座った。
『特等席』というのは、私がいつも座っているから誰も座らない席。
…皮肉よね。
読み始めたものの、内容が全く頭に入ってこない。
皇と同じクラスになってから、ずっとこうだわ。
ただし、例外もあったりして…ね。
席を立ち、本を戻してから、「オカルトコーナー」に向かった。
その中でも、有名な怪物を主題とした本を取った。
「吸血鬼、ヴァンパイア…」
憧れたこともあった気がする。
なぜかしらね、あいつが…。
そんなことあるはずがないじゃない。
ぶんぶんと、首を振りながら私は私に言い聞かせた。
そうよ、あるはずがないのよ。
私は、座ることすらせずに、本のページをめくり始めた。
「私の中では、黒髪のイメージが強いのに…」
勝手なイメージではあるけれど、吸血鬼の類は黒髪というイメージが強い。
なのに、私の頭にあるのは銀にも近い白髪。
でも、真っ白な肌、長い犬歯、長身の体。
これだけはイメージ通り。
…私は、なんて馬鹿な想像をしているのかしら。
クラスに吸血鬼がいるなんてこと、ありえないのに。
想像上の人物で、存在しない可能性もあるのよ。
でも、いたかもしれない人物。
それに、こんなバカげた想像をし始めたのには、理由があるのよね…。