†ヴァンパイアの恋情†

 ————春。

 桜がきれいな春。
 少し風がある日だった。

 皇と、初めて会ったのは。

 皇のことは前から知っていた。
 白髪に白い肌、長身の体型は、一目見ただけでわかった。

 強い風が吹いて、私は髪を抑えて目を瞑った。

 次に目を開けた時、皇は、こちらを向いていた。
 確実に。しっかりと。あの黒い眼で、私を捉えていた。

 そして、あいつは言った。

「良い血の香りがする」

 距離も離れていた。
 聞き間違いかもしれない。
 なのに、耳に焼き付いて離れない。

 でも、それだけじゃないのよね。

 同じ日の教室での休み時間。
 たまたま聞こえてきた会話があった。

 皇と男子のグループ。

「なあ!昨日のテレビ見た!?」

「見た見た!!」

「ヴァンパイアとか馬鹿みたいだよな!」

 くだらない会話だったのを覚えている。
 正直、聞きたくない。

 でも、皇が言った。

「ヴァンパイアは、いるよ」


 






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