【完】あんたなんか知らないっ!!
第3章
あなたが太陽 -翠side-
「翠ー!!」
遠くで誰かの声が聞こえる。
「...まってー!!」
その声に反応した男の子。
慌てて走り出す。
転ばないかな。
俺の心配は的中して、男の子は転んだ。
泣くな、男だろ。
俺は男の子に聞こえない声で呟いた。
「...っ。」
痛みに顔を歪ませて、ぱんぱんになった涙袋から涙が溢れないように目を擦る。
「お母さん、まってよ!!」
さっき彼の名前を呼んだのは、お母さんだったのか。
周りに誰もいない、静かな空間なハズなのに、男の子の母親は振り向きもせずに歩いていく。
「お母さん!!」
男の子は何度も「お母さん」と叫ぶ。
なのにぴくりとも反応しない。
男の子は必死に走る。
なのに歩く母親に追い付かない。
縮まらない、遠のかない。
そして男の子はまた転ぶ。
そして、彼の視線が下を向いたとき
母親は轢かれた。