【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「お見合いの話、したのか?」
「いえ。あの、もう会ってなかったので」
気づかれる前に個室へ戻りたいのに、足が動かない。
見つかりたくない。
「お前、顔は正直だぞ」
くっと幹太さんが笑った気がした。
「美麗!」
「!?」
「待って下さい、美麗!」
すぐそこには、デイビットさんが立っていた。走ったのか、
額には汗が滲んでいる。いつの間にか上着を脱ぎベスト姿で、爽やかに笑っている。
「デイビット、さん……」
「すみません。会いに来られなくて。ずっと会いたかった」
いつの間にかこんなにも好きになっていたんだろう。
デイビットさんの顔を見た瞬間、泣き出したい、抱き締めたい、触れたい、様々な感情が鬩ぎ合った。
綺麗な男の人だ。賭けだけで簡単に心を奪うような。
でも悪い人だ。あの日だけ。一晩抱いたら満足した、自分は沢山いる日本人の中の一人に過ぎないのだ。
「6月はイベントが忙しくて、でも何とか会いたいと麗子さんに言っても門前払いで。何度お願いしたか。 美麗、会いたかった」