【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
とは言うものの、冷静に話せる予感はしなかった。
美鈴も慌てて、流石に妊娠のことまでは読めていなかったのであわあわしていた。
「美麗、私の家に来ませんか?」
「家!?」
「今、冷静に麗子さんと話せないでしょう? 貴方に何かあれば心配です」
「そうだよ、お姉ちゃん。そんな事、ないとは思うけど、話しあう前に――突き飛ばされたりしたら赤ちゃんが危険だし」
母は、小百合さんとおじさんに宥められていたが、冷静ではなかった。
私も突き飛ばされることなんて無いとは思いたいけど、こうなったら精神衛生上よくないのは確かだった。
「分かりました。あの、でも」
デイビットさんを睨みつける。
すると、『ん?』と優しく首を傾げて此方の様子を伺う。
「私、その、デイビットさんを許したわけじゃないです」
可愛げのないその発言に、遠くから幹太さんにプッと笑われてしまった。
「ひ、人の一生に関わることを、か……賭けるなんてゆ、許せません!」
怒る私とは裏腹に、デイビットさんは降参だと言わんばかりに両手をあげて首を振る。
「それは、一生賭けて謝る予定です」