【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「触れても、良いですか?」
この状況でまで、私に決めさせるなんてずるい人だ。
でも、この声も瞳も、匂いも優しい腕も好き。――止められない。
「抱き締めてください」
そうお願いすると、丁寧で紳士なデイビットさんが一瞬、荒々しい動きで私の後ろ頭を引き寄せる。
「泣いてもいいですよ。私は、ずっとここに居ます」
頬に触れて、そう語りかける。
此処には、父の書斎から見える桜の木は無い。
此処には、私を縛り付けるものは無い。
自由すぎるその先に、私が一人迷子にならないようにと、傍に居てくれる。
知らないその先は、怖いけど貴方との夜は、この先もずっと忘れない。
おずおずと肩に両手を置いたら、デイビットさんは蕩けるような笑顔で私に口づけを落としてくれた。
瞼に、頬に、首筋に。
私も嬉しくて……涙が溢れてきた。
怖くて嬉しくて、優しくて温かい。
そんなキスに私は目眩を感じる。
「美麗!?」
「そんな、ドキドキさせないでください」
その熱さに、不慣れな私はへなへなと倒れてしまったのでありました。