【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
十、デート記録と婚姻届。
朝目覚めたら、出勤時間ぎりぎりだった。
ごそごそと布団から起きると、縁側をあり得ない光景が通った。
通った――?
「お風呂、ありがとうございました」
「いえいえ。皆さまはまだ寝ておいでですか?」
「はい。今から起こしますね」
デイビットさんがお手伝いの立花さんとにこやかに会話していて、思わず目を疑う。
というか、今あの人、腰にタオル姿で縁側を歩いてなかった?
「デイビットさん?」
「ああ、おはよう。昨夜はぐっすり眠れたかな?」
襖から顔を出した私に、お風呂上がりのデイビットさんが牛乳を片手にやってくる。
いつもワックスで後ろに流している金髪が、前髪を下ろし幼く見える。
前髪が降りるだけで、こんなに印象が違うんだ。
って、違う。
「遅刻です!ああああ、お風呂入ってない。お化粧落としてない、ああああ」
辺りを確認してまた目を疑った。
母と美鈴が寄り添うようにして眠っていたから。
とっくにお稽古の時間なんて過ぎてるのに。