【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「って、今は仕事仕事」
洗面台へ走ろうとして、憐れもない姿のデイビットさんに腕を掴まれる。
「貴方は今から私にキスしたくなります。賭けませんか?」
「すいません、今、私急いでて」
突然、この状況で何を言っているのかと思いつつもデイビットさんは呑気に話を続けた。
「会社へ電話しておきました。一時間遅れると」
「ええ!?」
「若い男の方が分かったと言ってましたよ」
「えええ!?」
幹太さんだ。寝坊したって言ったらきっと怒る。
真っ青な私に対して、デイビットさんは自分の頬をチョンチョンと指差す。
「ね?」
可愛くウインクされてしまえば、何だか賭けに負けた気分を味わってしまって私は気づけば背伸びしていた。
少し屈んでくれたデイビットさんの石鹸の香りがする頬へ口づけをする。
それだけで、満足そうに笑ってくれた。
「さあ、ご飯を食べましょう。仕事場へ送ります」
「デイビットさんは?」
「今日はオフです。もう少し、麗子さんたちと話をして、貴方を迎えに行きますね」