【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
春月堂に着いて速攻で皆さまに謝ったら、皆ハラハラした様子だった。
幸いだったのは今日は急な用事とかで山元さんが休んだけれど店が混んでいなかったことぐらいだ。
遅刻の理由を問いだされるかと思ったのに皆優しくて、幹太さんが『大丈夫だったか?』と一言声をかけてくれた。
きっとずっと気にしてくれていたんだ。御客さんが居なくなった隙を見て、幹太さんに謝罪したら、妙にまだそわそわ落ち着かない様子だった。
けれど、暖簾から顔を出しおじさんまでも話を聞いてくれたので、デイビーの賭けの話や昨日の母の話をした。
「それで、母と美鈴は私が出勤しようと玄関で靴を履くぐらいにお互い悲鳴を上げて起きてました。多分、母は生まれて初めての寝坊じゃないでしょうか」
「まあまあ。あの麗子さんがねぇ」
最後は小百合さんまでも話に参加して笑ってくれていた。
「すいません。いつもお世話になって――ってお姉ちゃん!」
店の自動ドアをくぐった途端、美鈴が私を見つけてちょっと頬を膨らませる。
タイムリーな時に来てしまったとは知らずに、私が朝起こさなかったことを怒っているようだ。
小花を散りばめた桃色の着物を着て、蝶の飾りが揺れるたびに音を出す簪。
唇はリップで潤い、心成しか御洒落している?