【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「ごめんね。美鈴たちがあまりにも気持ちよさそうに眠っているから」
「知りません。幹太さん、おはぎを10個ぐらいお願いします」
拗ねた美鈴はそれでもまんざらではないような顔をしている。
それより私は、幹太さんへの美鈴の視線が柔らかくて着物と同じ色を放っているように見えた。
「だから、10個ぐらいってなんだ。いつもいつもはっきり言え」
美鈴は、私が幹太さんを怖いと思ったあの日の台詞を言われていた。
けれど、美鈴は怖がらず笑顔を崩さないまま首を傾げた。
「そうですよね。母は余ったら私が食べてもいいって言ってたから多めに12個買っておこうかな」
「じゃあ、二個はサービスだ」
「やった」
美鈴が両手を上げて小躍りする。その姿は年相応で可愛いけど。
けど?
美鈴みたいに答えれば、幹太さんは怖くなかったんだ。
いや、でも、幹太さんは身に纏ったオーラ自体怖かったし、小学生の私じゃ会話なんてきっと無理だったはず。