【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
クスクス笑うと、彼は私の唇に触れた。
優しく指先でなぞられ、彼を見上げる。
頬に触れ、その指先は肩を撫で、お腹を優しく触る。
「産婦人科で、帝王切開かもしれないと聞いても貴方は迷わなかった。貴方は、強くて美しい。――貴方を好きになって良かったと日々思っています」
優しい言葉だった。
彼は、私に甘いんだと思う。
「ううん。宿った命を私が守るために頑張りたいだけです。私もデイビーさんが母に頭を下げてくれて嬉しかった。私も貴方に見つけて貰えて良かったです」
「美麗、愛称に『さん』はおかしいです」
クスクスとデイビーは笑い私を抱き締めた。
「両親は、日本に毎年旅行に行くぐらい此処が好きな人たちでした。両親のお陰で美一さんとも日本文化の交流イベントで知り合えましたしね。『春は桜が飛び交い、山は霧もなく、空は透き通っていた』『日本の空は美しい』両親の口癖でした。イギリスの空を見上げては比べるんです。でも、美一さんが亡くなったと知り、その痛々しい姿と、綺麗な空が余りにも対照的で、両親の目にいつまでも焼き付いていて、両親が言う『綺麗ねぇ』と言う空は、とても残酷な澄み切った色でした」