【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
すぐに立花さんが、温かいご飯とお味噌汁を持ってきてくれた。
ご飯が御赤飯だったのには、皆でプルプルと笑いをこらえてしまったが、母だけはツンと澄ました顔だった。
鯛の塩焼きなんて珍しいものまで並び(これは立花さんの仕業らしい)、デイビーは大興奮で食べている。
母が真ん中で、美鈴と立花さんが隣、私とデイビーが隣でご飯を食べる。
御箸も持ち方まで綺麗で、器用に魚の身を取り出していく。
その姿を見つめていたら、視線に気づいたデイビーが此方を見る。
なのでお互い見つめ合い、はにかむと甘い空気を蹴散らすような母の咳払いが聞こえて来た。
「久しぶりだね。皆でご飯」
ぽつりと美鈴が言う。
「そうだね」
「お姉ちゃんたちが稽古の時は、立花さんといつも一緒だったから」
「では、これからはずっと一緒ですね。私が美麗と一緒になるまで」
「で、デイビットさん」
なかなか挑発的な言葉に、母が湯呑を静かに置く。
「入籍するまでは、うちの子です。男性の家に泊るなんて許しませんからね」
「え、でも、できたら私、一緒に住みたいな」
「臨月になったら帰って来られるのもいいですね」
立花さんも助け舟をだしてくれた。
すると母の顔が険しくなる。