【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

お稽古の準備中だったはずの美鈴が、拗ねた顔で私を見る。

「もう! 幹太さん、酷いのよ! 送るとか気を持たせておいて、実は私経由でお姉ちゃんにこれを渡したかったみたい。酷いわ」

「これ?」

美鈴の一冊の本を押し付けられる。

「俺からは内緒にして欲しいって言うから言ってやる。乙女心を弄んだ罰なんだから」

美鈴は独り言のようにブツブツ言いながら私の返事も待たずに稽古室へ消えていく。
もう三味線の音が聞こえてくるから、お弟子さんたちの練習が始めっているようだった。

廊下でぽつんとなった私は、押し付けられた本を見る、

色んな国際結婚した女性の経験談が詰め込んだエッセイらしい。

どうして幹太さんがこんなものを?

ぼーっとしてる私を心配してこんな本を探してくれたのかな?

「あ」

本には、イギリス人と結婚する場合、婚姻関連査証の取得条件に「英語力試験」が追加されていると書かれていた。
私に英語は喋れるのかと聞いてきたる理由はこれだったんだ。
幹太さんは、これを読んで私に色々アドバイスしようとそわそわ落ち着かなかったんだと思うと、胸がじんと熱くなる。

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