【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!


「てな訳で、ありがとうございました」

「何が?」
「これです」

お昼の休憩で、賄いを食べ終え下げに行きつつ幹太さんにお礼を言う。
とぼける幹太さんに、昨日頂いた本を見せる。

「しらん」
本当に素知らぬ様子でそのまま作業に戻っていく。
幹太さんは練り菓子の模様を刻み終えた後で、桐箱に詰めている。
そのまま出荷するようだ。

「明日、デートなので参考になりました。ちゃんとこれに載っていた手順を彼に話してみます」


「そうか。俺は中身は知らないがまあ、頑張ればいい」

桐箱三箱に並べ終えると、帽子を脱いで椅子の深々と座る。

「お前の妹は、何に怒っているんだ?」

「え?」

「昨日、途中からずっと下を向いて怒った顔をしていた。それでこの結果だ。いつも愛想よく御遣いに来るくせに」

意外だ。幹太さんは自分への好意には全く気付かない人なんだ。
本当に大切な人以外、眼中にないのか。
だからこんなに良い人なのに今まで浮いた話が無かったんですよ、と小百合さんに報告したいぐらいだ。

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