【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
美鈴が簡単に黙っているはずなんてあるはずないのに。
「笑うな」
「すみません」
幹太さんは本当に困っているのかもしれない。
それでも顔がにこにこと崩れてしまう私に、幹太さんは呆れ顔だ。
「俺の事はもう良いとして、お前もちょっとは分かったろ」
「分かる?」
「『10個ぐらい下さい』だよ。俺は毎回それを聞いて苛々してたんだ」
まさか幹太さんからその話を振ってくるとは思わず、一瞬固まってしまう。
一瞬で済んだのは、とっくにあの日の恐怖が取り払われていたからだ。
「3歳ぐらいから大人たちに混じって稽古させられて、親の顔色ばかり伺うガキで、妙に子供らしくない哀愁まで漂わせて」
「わ、私の事ですか?」
「他に誰の話をしてんだよ」
睨まれると「そうですよね」としか返せないけど。
「私の事、嫌ってたんですか?」
ついつい聞いてしまうと、幹太さんは否定しなかった。
「桔梗はあれぐらいの歳の頃は俺に毛虫とか投げつけてたぞ」