【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「舞踊は、本当は足が竦むぐらい嫌いでした。華やかで指先から儚く繊細で美しく。でもその裏でいっぱい努力して……皆頑張ってる姿が見えるのにいつもやりたくない、仕方ない、我慢しようって耐えながら自分が嫌で。自分の嫌いな部分ばかり見えるから嫌いでした」
「競争心も闘争心も無さそうだもんな」
多分、母の背中が遠すぎて高すぎて理想を高く持ってしまったからだろうと思う。
誰が悪いわけじゃない。甘ったれだった私が悪い。
「良かったな」
幹太さんは最後までぶっきらぼうなのに優しい。
「あいつのおかげなんだろ?」
あいつ、とぼかすけど……私にはすぐに思い浮かぶ。
あの日、縁側から桜の木まで舞い降りてきてくれた彼を。
「あの人のおかげです。そして強くなろうと思えたのはお腹の子のおかげです」
鳥籠の外は光に溢れ広すぎて、羽ばたいても世界の隅は見つけられない。
そんな広すぎな世界で、彼が私を見つけてくれた。