【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「お前、クソ真面目で世渡り下手そうで危なっかしいと思っていた。菓子の名前やら由来やら中身やらメモ帳が真っ黒になるまで書き込んでたりする努力とかさ。その真面目で真っ直ぐな所は長所でもあるから、頑張れよ」
「ありがとうございますっ」
「危うく流されてもいいかな、と思う程度にはアンタ、放っておけなかったからさ」
「流される?」
幹太さんには似合わない言葉に首を傾げると、ふうと深々と溜息を吐かれた。
「生きにくそうだから、俺が守ってやらなきゃって思ってしまったってこと」
俺が守ってやろうと流されるほど、私が放っておけない?
それは、同情して結婚しても良いいかと諦めの極致に居たの?
でもそれって私の為じゃなくて、幹太さんも桔梗さんを諦めるために私を見ようとしていたんじゃないかなって思う。
「無言で俺を見るな。――これで良かったんだから」
気まずくなったのか、幹太さんは立ち上がり、冷やし中の餡の上に被せていた布を捲り、混ぜだした。
言うんじゃなかった、しまった、と背中に書いていた。
「大丈夫ですよ。私、流されて幹太さんがお見合いしそうだったなんて桔梗さんに言いませんから」
「……あんたが鈍感で助かるよ」
私の返事は、幹太さんを安心させられたみたいだけど、ちょっと馬鹿にされていた。
では、どんな言葉を言えば幹太さんを満足できたんだろうか。