【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!


幹太さんは、言葉じゃなくて雰囲気というか表情というか、背中?
そんな部分で語っている部分があると思う。

豪快でがさつな部分がある桔梗さんは然り、私みたいに男の人の免疫がないんじゃ分からないと思うんだけど。


「すいません、お願いしていた笹井ですが」

ぼーっと考えていたら、自動ドアが開き人が入って来たのにも気づかなかった。
慌てて顔を上げ、いらっしゃいませと笑顔を作った時だった。


「佐和子さんっ」

「こんにちは、美麗ちゃん。一か月ぶりね」

奥から幹太さんが顔を覗かせ、佐和子さんを見ると奥へ戻り用意していた紙袋を渡す。
佐和子さんは、アップにした髪から見える白く美しいうなじを指でなぞりながら、綺麗に笑う。
父と同じくらいの年齢だと思うのだけど、着物きっちりきてはんなりした雰囲気は若々しい。

「この前は、その、お恥ずかしい所をお見せしました」
ワンピースを汚したあのイベント以来だった。あの時だって久しぶりの再会だったのに、私は。

「良いのよ、それより、麗子さんにはきっちり口止めしといたから、貴方からもちゃんと言いなさいね」
「?」

代金を受け取り、レジを打ちながら何の話か分からず言葉を探していると、袖で口元を隠しながら佐和子さんは笑う。


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