【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「さて、今から観覧車に乗って、それから食事にでも行きましょうか」


「本当に乗るんですか?」
空はまだ紫にもなっていないし茜色になりつつあるぐらいで、高校生カップルがぽつぽつと乗っているぐらいで私たちは浮くと思う。


「乗りたくなる魔法が必要ですね」
「ど、どんな魔法をかけるんですか」

にんまり笑うデイビーは、低い声で言う。

「真っ赤なバラの花束を貴方に跪きながら渡します。注目されて恥ずかしい貴方は、私の手を引いて観覧車に急ぎ、周りからは拍手喝采で見送られながら乗り込む計算です」

「なっ そこまで計算してるんですか!?」
全然魔法ではなく、私の性格を熟知した犯行です。
綺麗な顔で甘い言葉を囁くけど、そうだよ。彼は賭けで私をあの夜、一回だけ騙しているんだから。


「私は、結構強かな男ですよ?」

「そうみたいですね」

「そんな私に夢中になった貴方は観念しなさい」

さ、選んでと促される。
花束を持って注目されるか、素直に観覧車に乗るか。


そんなの聞かなくても分かっているのに。
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