【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!

「わ、ビルが小さい」
まんまと乗せられた私は、生まれて初めて乗るふわふわした心地の観覧車に、少しだけ胸を弾ませてしまう。

「見て下さい、指輪選んだ御店も見えますよ」
「いえ。私は高い所苦手なので大丈夫です」

え?

肩をトントン叩いて指差したままの私は硬直してしまった。
いや、きっと聞き間違いだ。

「そんな、面白くないですよ。だってデイビーが乗ろうって言ったのに」
高いのが駄目なら、何の為に乗るっていうの。


「大事な話があるから、です。雑音が聞こえない場所で」

そう言ってジャケットの裏ポケットから、四つに折りたたんだ紙を私に渡してきた。


「婚姻届です。日本の方の」

「え」

「私の名前はもう記入済みです」

それは、いきなり過ぎて言葉が出てこなかった。
嬉しいことなのに、いまいちピンと来なくて。

「ただ、日本で結婚するなら戸籍は貴方が筆頭になり私は備考欄に名前が載るらしいです。で、名字は夫婦別姓にも出来るし、『ブラフォート鹿取』にもできるみたいです。これ、私は面白いと思ったのですが」
と、デイビーはよく調べてくれたのか色々と、それはそれは色々と説明してくれたけど半分も分からないよう。

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