【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
両手を広げて私の身体を受け止める体制をとる彼は、本当に心配しているようだ。
いくら私でも、そうそう慣れ親しんだ家で転けたり、滑ったりしないのに。
「あの、私と立花さんにイギリス紅茶の煎れ方を教えて頂けませんか」
「イギリス紅茶?」
「ポットを温めるとか、温かい紅茶にはどの葉が美味しいとか、本には様々に書かれていて」
「ふむ。そんな手の込んだ事はしなくて、ティーバックでいいですよ」
「えええ!?」
立花さんがあんなに慌てておろおろしているのに、本場の方があっさりと楽な道を示してきた。
「私は、一日に何十回と紅茶を飲むのでティーバックですよ。美味しいし御手頃ですし。こだわって飲むなんて滅多にしないので御気になさらずに、とお伝え下さい」
美麗は優しいですね、と何故か忠犬から頭を撫でられる始末。
いやでも、あの高級紅茶の山はどうしよう。
「ふふ。色んな人がいるからイギリス人だからとひとくくりにしちゃ、身が持たないわよ」
袖口で口元を隠しながら佐和子さんが上品に笑う。
「この子、仕事が楽しいんですから時間をかける嗜好品にはあまりこだわらないわよ。気にしない気にしない」
「じゃあ、朝ごはんは和食ですか、洋食ですか?」