【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「美麗が作るならどれでも美味しいです」
「……!?」
即答だった。
天然のたらしかのように、息を吐くようにキザな台詞を言うから固まってしまう。
「あの、私その、料理未経験なのでまずは、その、期待しないでください」
「じゃあ、一緒に作りましょう。私が作るマフィンは、母親伝授ですから」
キラキラ笑顔で答えてくれるデイビーに、しどろもどろの私、この先不安しかない私の前で、佐和子さんが声を我慢して笑っている。
「じゃあ、すぐに紅茶の用意をしますね」
「ああ、美麗待って。あの桜の木の向こうの美一さんの部屋は今もそのままなんですか?」
呼びとめられて、とうとうあたふたしていた立花さんが此方へ向かってきた。
私がティーバックで良いみたいですとジェスチャーするとスキップして戻っていった。
「美麗?」
不思議そうに名前を呼ばれてその視線のまま、父の部屋を見て、穏やかな優しい気持ちが溢れてくる。
「父の仕事の道具がそのまま置かれています。まるですぐにでも仕事ができるように綺麗ですよ。母に言えば入れますし、私も丁度昨日入ったけど季節の花が」
「昨日?」