【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!


「はい。昨日、――父の着物の切れ端を分けて貰った時に入ったんです」

「切れ端?」
何に使うのだと首を傾げるので、私はにんまり笑う。

「後で見せます。濃い紫……殷紅色(あんこうしょく)の着物の切れ端を頂きました。父がこの色を好んでよく着ていたんです。その切れ端で私もぬいぐるみを作ろうと思ってて」

ふふふと得意げに答えると、デイビーの碧眼の瞳が宝石のように輝きだす。
濃い、または黒みを帯びた紅色。濃い赤紫とも言えるその色は、男の子でも似合うし、女の子は首に結ぶリボンをピンクにしたら可愛いし、デイビーが買った生地と並んでも悪くないと思う。


「母が、デイビーの身長じゃ父のを譲ってあげられないから、子供用に仕立てなおそうかって言ってたよ」

「く。自分の身長を呪う日が来ようとは」

悔しげに握りこぶしを作るデイビーに大声で笑ってしまったら、座敷から母と美鈴が顔を出した。

「お姉ちゃんが大声で笑ってるの、初めてみたかも」

「みっともないったらありゃしないわ」

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