【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「美麗、貴方は何をしてるの? 桜茶の用意が出来たから皆さまをお呼びして」
ぴしゃりと名前を呼ばれて、背筋を伸ばしてしまうのはもう癖になっているみたいだ。
母に強く呼びとめられた幹太さんまでも苦い顔で座敷に座っている。
私とデイビー、佐和子さんと美鈴に幹太さん、母と立花さんも座り、皆で桜茶を飲みながら和菓子を頂いた。
複雑に気持ちや関係は絡み合い結び、ほどいたつもりがさらに結ばり、堅く堅く締めつけられたり。
案外、反対から引っ張れば簡単にほどけたり。
何かのきっかけがあれば、運命なんて簡単に覆ってしまうのかもしれない。
ちょっぴり塩辛い桜茶を飲みながら、此処まで来る過程に全て彼の賭けが絡んでいるのだと改めて振り返ってみると彼は私の王子様なのかもしれない。
「その、桜茶は綺麗ですが、紅茶の方が好きかもしれません。眼だけが満たされました」
「縁起物だからな。花開くっていうだろ」
幹太さんはそう言うと飲み干してしまった。
反対に拳を作り、口を抑え塩辛かったのか眉をしかめるデイビーを見て皆で笑い合う。
彼の為に、これを飲んだら紅茶か珈琲を入れてあげようと思う。