【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「そんなんじゃ、私は満足できないんだから!」
「いてっ!」
「あ、ごめん」
つい羊羹を割って食べていた、竹の細工の菓子楊枝ごと幹太の背中を殴ってしまっていた。
けっこう勢い付けて。
背中を押さえながら、凄んでくる幹太にへへんと笑ってやる。
「悔しかったら、素材からでも甘さを出してみなさいよ。少しはあるでしょ、少しはっ」
「てめっ 菓子楊枝で突くなっ」
両手を、あの夜のように力強く握られる。
けれど、今度はあの夜のような不穏な雰囲気は感じられなかった。
「栗の甘さだけでも甘いと思ったんだが」
「私は、砂糖じゃりじゃりでも好きよ」
「それこそ、素材を台無しにする行為だと思うが」
「……くそ真面目」
「短気で頑固」
お互いそうボソっと言い合った後、私から先に笑いだした。
幹太も、大きな手で頭を押さえながら少しだけ、微笑んだ。