【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「自分を甘やかしていいなら」
「うん?」
「お腹、触っていいか?」
私の、九ヶ月目になったお腹を見て幹太がそう言う。
自分を甘やかした結果が、私のお腹?
ますます彼が分からない。
「良いに決まってるじゃん」
ぽんっと叩いてから差しだすと、大きな手のひらでゆっくりと触れてきた。
晴哉と付き合った時も婚約した時も、表情を変えなかったのに。
入籍した時は、無理やりおめでとうを言わせてしまったけれど、さ。
「すっげ、俺の子じゃないのに――愛しい」
「あはは。晴哉の事、本当に好きでいてくれたのね」
「それは、どうだろ」
そう短く言って、お腹に耳を寄せる。
そこまでは、許してないんだけどな。
まあ、甘くなったんならそれでいいか。
「こいつの父親には、一生なれないと思うと……」
「幹太?」
「妊娠中は甘いもの駄目って聞いてたから、お前用に砂糖少なくしてけど、作りなおしてみるか」
「ちょっと!」
また背中を向けて逃げようとする。
今度は、駐車場で彼が待っているわけじゃないんだから。
だから、私は助走を付けるとキミのその嘘つきな背中へ殴りかかった。
甘さは、ない。