【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
本当は、家に帰るのは憂鬱で、嫌なことばかり目に入って少し息苦しいから。
だから、仕事も嫌じゃない。ただ、帰路に着くのは嫌だった。
私が居た位置に妹が居る。私よりきっと要領よく居る。
そう思うと、私が我慢していた長い月日が本当に無駄で滑稽に思えてしまうから。
でもこうして、デイビットさんの車に乗りながら、家に帰ると少し気分が軽くなった。
0時になっても魔法が解けないドレスと魔法の靴があるからだろうか。
雨の音が大きくて、BGMに流していたジャズも消えていく。
雨が私の嫌な心を綺麗に洗い流そうとしてくれていた。
家に着くまでずっと。
家に着いてからもずっと。
魔法は私の中に溶け込んでいく。
すぐに押し入れに洋服と靴を隠したけれど、スリルにも似たこの胸の動悸は消えなかった。