【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
気合いをこめて、家へと向かう。
途中の駅でセールをしていた。
半額セールのシールが貼られたワンピースをマネキンが着ていたのを見上げる。
服なんて着物ばかりで私服がない。
今日だって、いつ買ったのか覚えていない。書道教室ように買った、黒いワンピース。
平凡なラインで、特別可愛くない柄。
仕事の初給料で私も服を買ってみよう。
今度はデイビットさんの好きな色を伺って――…?
言ったあとで気づく。
(デイビットさんとは明日の賭けの罰ゲームだけしかもう会うこともないんだから)
買うなれば、自分の好きな色でいたいと思う。
何色が良いだろう、そう言えばジーンズも持っていないな、と考えながら自分の家の門を開けた。
「お姉ちゃん」
「!」
背後から、美鈴に話しかけれた。
私の卒業式の時の話しあいの乱入以来の事だ。
「……私の、扇子とか知らないよね?」
(あっ……)
私はすぐにどこにあるのかは分かった。