【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
帯や帯止め、足袋、次々脱ぎ捨てて持参した着物用のハンガーにかけていく。
お弟子さんがきつく結んでくれた帯は、脱ぐのに時間がかかった。
早めに出たからまだ時間には余裕があるけれど、逸る気持ちが止められなくて大雑把に扱ってしまう。何十万はするだろう着物を。
そのままロッカーにあった箱を開けて、中の服を両手で掬い上げるように持ち上げた。
ベビーピンクの可愛い服。春らしく襟元に白いファーは、靴とお揃いだ。
胸元から下が、ふんわりと広がり、少し膝より上だけど控え目でちょうどいい丈だと思う。着た後に、ふわりと一回転すて、ロッカーの姿見で自分の姿を見て浮かれてしまう。
一回転して後、足元にカサリと落ちたのは、一枚のメッセージカードだった。
『Touch my heart.Give us kiss? Up to you.』
「何、これ」
メッセージの先後にはちゃんとデイビットさんの名前が書いていた。
デイビットさんは、――私が読めないと思っていたのかな?
一応、英語学科を卒業したのですけど。