【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「おい、帰宅ラッシュに当たると渋滞するぞ」
休憩室のドアをノックされ、呆然としていた私は我に返った。
我に返って、服と靴、バックにシュシュを取り出しながら、手が震えている。
鏡に映る私の顔は、茹でたこより真っ赤だったと思う。
(――からかわれている?)
ピンクのルージュを引きながら、書かれていた英語が頭の中で反芻する。
顔が真っ赤なせいで、ピンクに塗れたのか自信がない。
シュシュで結んで、右肩に流して、ふらふらしながら靴を履いた。
「すいません、ハンガーにかけてます。着物」
「あ、ああ」
休憩室の扉から申し訳なくて少し伺い見るように顔を出すと、幹太さんは少し取り乱していた。
そしてすぐに目線をそらすと、咳払いして車へ乗れと親指で後ろを示した。
慣れないハイヒールに戸惑いながら、私は心臓の音が大きく鳴っているのを止めることが出来なかった。
あれ、は。
あれは、ラブレター?