【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
慌てて財布の内ポケットに仕舞い込んでしまったが、怖くてもう一度見る気分ではない。
舞いあがってしまいそうだ。
「えーっと、着いたけど」
大使館の周りには、既に車や、警備の人たちで溢れかえっていて、これ以上は進めそうにない。
大使館の門は開け放たれ、賑やかなざわめきが聞こえてきている。
旧屋敷跡だと聞いた大使館は、大きく聳え立つ建物からは気品と美しさを感じられ、――デイビットさんに雰囲気がよく似ていた。大きく掲げられているイギリスの国章さえ、神々しく感じられた。
「門までエスコート頼まれてんだが、ちょっと待ってくれよ」
幹太さんが周りを確認し、警備の人に駐車場を聞いてくれようとしていた時だ。
「美麗さん」
車のドアを開けられ私の顔を覗きこんできたのは、デイビットさんだった。
「桜の化身かと思いましたよ。――似合います。本物の桜が霞んでしまう」
「……ははは」
再会して数秒で、こんなに褒められるとは思わなかった。
蕩けるような笑顔で言われたら、どうしていいか分からない。