【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
六、春の夜の夢。

桜の花びらが舞い落ちる。その散る姿は儚く最後の輝きを放ち美しく。
花弁に朝露が輝き、音もなく零れるような。
綺麗で音もない、朝。


ホテルのモーニングコールで起こされた。
何も身に纏っていないはずが、バスローブがかけられている。

なんとか電話まで這って、そのモーニングコールへ出た。

「お、おはようございます?」

『おはようございます。鹿取様。既に御連れの方から代金を頂いています。10時がチャックアウトですのでごゆっくりされて下さい』

「え?」
『起きたらルームサービスを運ぶよう言われてますが大丈夫でしょうか?』
「ええ!?」

まだ半分眠っていた意識の中、つい大きな声を上げてしまった。
そして呆然となって辺りを見渡す。

昨晩、月の光が淡く射し込んでいた窓からは、駅の近くの高層ビルが並んでいるのが見える。うちからそう遠くない場所だ。

静かに流れるBGMは、昨日の夢のような時間を奏でているように聴こえてくる。

『鹿取様?』
< 73 / 245 >

この作品をシェア

pagetop