【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
六、春の夜の夢。
桜の花びらが舞い落ちる。その散る姿は儚く最後の輝きを放ち美しく。
花弁に朝露が輝き、音もなく零れるような。
綺麗で音もない、朝。
ホテルのモーニングコールで起こされた。
何も身に纏っていないはずが、バスローブがかけられている。
なんとか電話まで這って、そのモーニングコールへ出た。
「お、おはようございます?」
『おはようございます。鹿取様。既に御連れの方から代金を頂いています。10時がチャックアウトですのでごゆっくりされて下さい』
「え?」
『起きたらルームサービスを運ぶよう言われてますが大丈夫でしょうか?』
「ええ!?」
まだ半分眠っていた意識の中、つい大きな声を上げてしまった。
そして呆然となって辺りを見渡す。
昨晩、月の光が淡く射し込んでいた窓からは、駅の近くの高層ビルが並んでいるのが見える。うちからそう遠くない場所だ。
静かに流れるBGMは、昨日の夢のような時間を奏でているように聴こえてくる。
『鹿取様?』