【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
玄関に居るのは、稽古着姿のままの美鈴だった。
美鈴は、私を見るなり大急ぎで駆け寄ってきた。
真っ青な姿で。
「さっきまで、ずっとずっと待ってたんだよ! お母さんが連絡しなくていいって私見張られてて。でも、明日から忙しくなるから今日しかもう会えないって言ってたの。でもお母さんがもう遅いからお引き取り下さいって、なんだか二人ともピリピリしてて」
「落ち着いて。何の話か分からないよ」
泣きだしそうな顔の美鈴は、キッと私を睨むと紙袋を押し付けてきた。
「デイビットさんだよ!」
かさりと紙袋の中から音がした。
「私、戻らなきゃ」
庭を走り抜ける美鈴を視界の隅で捉えながらも、紙袋の中を確認すると胸に抱いて方向転換すると走る。
今まで此処に居た?
私を待っていた?
もう会えなくなる?
不安な言葉ばかりが頭を過る。
走って走って走って、バス停まで戻ってきても車なんて一台も見えない。
急いで大通りまで駆けだそうとして、足がもつれて転けてしまった。