【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
七、日進月歩、進めよ乙女。
あの満月から3週間と数日。桜は完全に舞い散り、所々小さな紫陽花が咲き始めている。
私は、桔梗さんが見守る中、割烹着から若草色の着物へと着替えお団子に髪を結いあげていた。
「似合う。似合う。春月堂らしい素敵な店員さんだわ!」
「ありがとうございます! 一年間はまだエプロンに研修中のプレートを付けさせて貰いますので、ご指導のほどを」
「おじさーん、幹太、見てみて」
「桔梗さん……」
全く私の話も聞かず、調理場から二人を呼び出す。二人も何故か素直に調理場から出てきた。
「ほーう。やっぱ若くて可愛い女の子は着物を着ると奥ゆかしくていいねぇ」
「でしょ? 美麗ちゃんみたいな控え目な子は特に似合うよね」
「ってか、いつの間に仲良くなってんだ?」
幹太さんは私の割烹着から桔梗さん達と同じ正社員用の着物になった事はお構いなしで、下の名前で呼び合うのに反応していた。
それを分かっているのに、意地悪な桔梗さんははぐらかす。
「残念ねぇ。せっかく夫婦みたいに美麗とペアだったのにね」