難攻不落な彼女
何も言わず、立ち止まる咲良に涼介が続ける。



「後でわかったんだけど、なんかその子、色々言われてたみたいでさぁ・・・
 
 それから、なんとなく特定の好きな子はいないんだ〜」



トラウマというほどのことでもない。大失恋をしたわけでもない。ただちょっと、ちょっとだけ・・・


「まぁ、チャラ男の俺には、今が一番ってことかな?」


明るく言う涼介に、咲良が優しく言う。


「涼介君はチャラ男じゃないでしょ。ただ、優しいだけでしょ。

 大丈夫だよ。今度はきっと気づいてあげられるよ。守ってあげられる。」


そう、ただちょっと、彼女が傷付けられているのに気づけなかった自分がふがいなかっただけ。


ただちょっと、彼女を気になっていて、よく見ていたはずなのに、そんなことにも気づけなかった自分に失望しただけ。



それだけなのに、その言葉に涼介は不覚にも泣いてしまいそうになる。


咲良が続ける


「大丈夫だよ。次に好きな子が出来たら、私が守ってあげるよ。

 その子の友達になって、味方になるよ!

 涼介君は、私の友達だからね!!

 もうすぐ、親友のの彼氏の親友ってことにもなるかもだけど」



涼介は、咲良の言葉に救われた。そう言われて嬉しくなった。


あの出来事が、自分の心に重くのしかかっていたとは思わないが、それでもやっぱり心のどこかに引っかかっていた。


次に好きな人が出来たとき、どうなるんだろう・・・また同じことを繰り返すじゃないだろうか。


そんな小さな不安が取り除かれた気がした。

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