難攻不落な彼女
(今日は何にしようかな〜・・・)


そんなことを考えながら自転車をこいでいると、前に止まって、スマホをながめる咲良を見つけた。


何やら考え事をしているようだ。


「どーうしたの?」


涼介が声をかけると、ちょっと驚いたように涼介の方を見た。



「あー、今日は家に一人だからどうしようなか?と思って」


「一人?」


「うん。お兄ちゃん達みんな遅くなるんだって。ご飯もいらないって言うからさぁ。」



「そうなの?よくあることなの?」



「ううん。だいたい誰かいるんだけど、今日は、みんな予定が入ったみたい。」



少し寂しげな咲良。


涼介は、その気持ちがわかる。


4人兄弟というにぎやかな環境で育った者にとって、家で一人で食事とはなかなか寂しいものだ。


涼介の家も昔は、鬱陶しいくらい煩かったが、兄弟が大きくなり、生活リズムが崩れ、全員で食事することも珍しくなった。


だんだん人数が減っていく食卓。


昔は、鬱陶しかった煩さも、今になっては懐かしい。


「うちで食べる?」


とっさに言ってしまった。


「え?」


驚く咲良に、慌てて涼介が弁解する。


「イヤイヤ。変な意味じゃないよ!弟もいるしさ!
 
 ただ、今日は俺が料理担当だし、一人なら一緒にどうかな?とか思ったりして・・・」



「別に、そこは疑ってないよ。」



笑いながら言う咲良。



「う〜ん・・・本当に行っても良いの?」



伺うような視線に、勢い良く答える涼介。



「いいよ!もちろん!!」



「じゃあ、お邪魔させていただきます。」



二人は自転車をこぎだした。
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