難攻不落な彼女
「買い物していっても良い?」

「うん。」


二人は、涼介の家のスーパーに立ち寄った。


今日の晩ご飯と、明日の朝ご飯の材料しか買わないとは言えど、男5人家族だ。

買い物の量はものすごく、いつもカートを使わなければいけない。


イケメンの高校生が大量の食料を買う光景は、スーパーに買いに物に来る主婦にとって、少し珍しいく、いつもチラチラ見られることが多い。

しかも、今日は咲良も一緒だ。

いつもより、視線が多い気がするのは気のせいではないだろう。


しかし、咲良はそんなことを気にする風でもない。


「晩ご飯、何にするの?」



「あー、まだ決めてないんだよね・・・何食べたい?」


「何がおすすめですか?」


きっと涼介の作れないものを言って困らすのが嫌だったんだろう。

そんな咲良の問いに、涼介が考え込む。


「う〜ん、○○の素とか使うやつだったら、大体できるよ」


兄弟の中で料理が得意な方とは家ども、所詮は普通の男子高校生そんなもんだ。

ちょっと拗ねたように言う涼介を見て、今度は咲良が考え込む。


「ねぇ、私が作るって言うのはどうかな?」


「え??!!マジで??!!!」


咲良の提案に、涼介の声はついつい大きくなって、周りの注目を集めてしまった。


「だって、今日のお金、私が払うって言ったら受け取ってくれる?」


「いや、受け取るわけないよね。」


即答する涼介に、咲良が続ける。


「一人で寂しい思いをする私を哀れんで、夕食に誘ってくれたでしょ?

だから、涼介君の料理当番を、私が一日代わってしんぜよう!」



何かのお礼に、料理当番を代わる。



涼介は、その言い方が、普段から分担で家事をしている人間特有の発言だと思った。


涼介も、兄弟の間でよくやる。頼み事を聞く代わりに、家事をやる。


咲良は、自分の手料理を涼介に食べさせたい訳じゃない。ましてや、料理が得意なことをアピールしたい訳でもない。


ただ、涼介の気遣いの礼に、料理当番を代わってくれるのだ。



涼介は、その提案がなんだかくすぐったく感じた。
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